Wonderful
Chance

mission

 
ペア 2022/2/13 16:46 No.5
(趣味のショッピング、バイト先のカフェ。どこにしたって、この時期はバレンタインの文字が踊る。恋人がいない時は催事場にて、気に入っているブランドのチョコやパッケージの可愛いお菓子を手に入れる時季に過ぎなかったけれど、今年は違う。大切なひとへと、想いを込めて準備するのが恋人というものだろう。いくつか御用達のブランドから彼が好きそうなものをピックアップしていた休み時間にて、クラスメイトの談笑が耳に入ってきたなら、大幅に路線を変更することになるのだけれど。「やっぱり手作りがいいよね?」「気持ちも伝わるだろうしね!」──包丁など、学校の家庭科の授業でしか握ったことがない。そんな人間がお菓子作りをしたところで、パティシエの手による物に叶うわけがない。彼だって、美味しいものを食べたいはずだ。それでも、手ずから時間をかけた品を食べて貰えるというのは、なんだか未知なる素敵なことのように感じてしまった。その日から秘密の特訓を経て、今に至る。)……うわっ、わかってたけど、囲まれてるわね……!(体育館を訪れる前に、髪を梳かして制服に埃がないかを確かめて、と身なりを確認していたら、少し出遅れてしまったらしい。なかなか直接関わることのないボーダー隊員かつあの整った顔立ちともなれば、想定内の事象──とはいえ、実際目の当たりにすると凄まじい。順番を抜かしていくのも気が引けるが、待っていてはいつまで経っても渡せない。下手をすれば、顔もろくに見れないままイベントが終わってしまうかも。持っている小ぶりな紙袋を見下ろす。この日のためにラッピングの練習までした。前以てラインで会いにいくとは告げていたし、彼も待っててくれていることを信じて、最後尾から輪の中心に向けて、大きく手を振った。探してくれているなら、目に止まるはずと。背丈にあまり恵まれた方ではないから、ぴょんぴょん飛び跳ねることにもなろうが、一頻りアピールをして目線を貰えたと思った瞬間、体育館の少し離れた柱の影を指差す。伝わったかどうかはわからないが、自身の皆無の体力では息が切れそうなため、程々にして待ち合わせのつもりで示した場所に向かおう。)ああもう、整えたのに台無し……。(乱れた髪を直す手は、慣れないことをしたせいで傷だらけだ。我ながらベタな勲章が気恥ずかしい。上手く抜けてくれば、こちらで密やかに相対叶う目算にて、彼の方を見守りながら待ってみる。)
調月仄火 2022/2/14 01:21 No.11
(近々行われるバレンタインの広報イベントに玉狛支部代表としてお前が参加してこい、と烏丸に言ったのは誰だったか。ランク戦、その他業務、そもそも星輪の生徒であるがためにイベントは学院側として運営に参加するからムリ、などの理由を重ねられて、気づけば烏丸が最も適任であるということになっていた。それに異を唱えなかったためスムーズに参加が決まり、玉狛支部では以後とくに話題にもならなかったが――言ってしまえば渡りに船であった。ボーダーの訓練や任務、朝夕を問わず複数のアルバイトを掛け持ちする身に、彼女と頻繁にデートする時間を創ることは難しい。任務で彼女に会えるのは幸運以外の何物でもない。参加が決まったことはすぐに彼女に報告し、今日を待ちわびていたが。実際にイベントが始まってみると――参加者が想定以上に多く、囲まれてしまって動けない。)はい、どうも。ありがとうございます。(事務的な受け取りを幾ら繰り返しても終わりが見えない気がしてきた。時々彼女を探して視線が彷徨い、ふとその端にぴょこぴょこ跳ねる人影を見つける。)――、(目が合った、気がする。彼女がある方向を指さし、そちらへ向かうのを目で追って微かに頷いた。その後もいくつかのチョコを受け取った後、「すみません、交代お願いします」と他の隊員に話を振り、長蛇の列を任せて迷いなく移動を開始する。ボーダーに戻ったら何か飲み物でもご馳走させていただこう。他の隊員の後方を通って参加者の生徒たちの視線を切り、体育館の端を通って、まるで何らかの急用のために急いでいるかのように一直線かつ足早に、彼女の元へ。)仄火さん、お待たせしました。――……? どうしたんですか、その手。(辿り着いたなら真っ先に目ざとく彼女の指の絆創膏を見つけて指摘する。バレンタインの、ボーダー隊員にチョコを渡すというイベントで会うのだ。それなりに期待はしていたけれど、彼女が用意してくれるなら既製品であろうと思い込んでいたから。いつもは傷一つ無い綺麗な手をしている彼女の異変に、ただ不思議そうに尋ねるばかり。)
烏丸京介 2022/2/14 18:29 No.23
(合図が通ったとしても、時間がかかるかも──とは、杞憂であったことがすぐ知れて安堵はするけれど、あんまり真っ直ぐ突っ切ってきてくれるので、思わず笑みがこぼれてしまった。それはもう、素直に嬉しくって。髪を整えていた手は口許に添えて、くすくすと微笑ましそうに彼を物陰に迎えるとしよう。)待ってないわよ?京介ったら、まっすぐ来てくれるんだもの。驚いちゃったわ、ありがとう。(果たして彼のお務めを邪魔してもいいものかは迷うが、折角赴いてくれたのだから咎めなどしない。見上ぐ目許がやわこく緩んで、久しい恋人との逢瀬に堪らなく喜んでいるのだと伝わってくれたら。しかしそれも、手の傷を指摘されたなら一瞬固まる。切り傷と、あとは火傷もすこし。目敏く気が付いてくれる癖に、その理由には思い至らないらしい。鋭いのだか、鈍いのだか。この年下の恋人には戸惑わされることも多くて、けれどそれが嫌いではなかった。手の傷を隠すように、チョコを勿体ぶるように、手は背の後ろに回してしまって、すこし恥ずかしそうに告げる。)……あのね。せっかくだから、手作りしてみたの。あなたにあげるチョコレート。(常ははきと喋るように心掛けている口調も、この時ばかりはむにゃむにゃもごつく。残念ながら致命的に不器用であることはきっと彼も知ってくれているだろうから、相当に苦戦したことは想像がつくやもしれない。──言葉を次ぐ前に、「烏丸さん!」と割り入る声がする。先程列に並んでいた生徒だろうか、どうしても直接渡すことを諦められなくて、彼の行先を追いかけてきたのだろう。「ごめんなさい、どうしても渡したくて……」必死なあまり、自分は目に入っていないか。少女が差し出すチョコレートは、とてもきれいにラッピングされていた。見様見真似で施した自分のものとは違う。受け取ってあげたら、と視線で催促はするものの、こちらは手作りの菓子を渡すことに少しずつ腰が引け始めていることは否めない。何もかもがはじめてのことばかりで、すっかり自信がないものだから。)
調月仄火 2022/2/15 00:58 No.33
どういたしまして。仄火さんと二人の時間が取れるように根回ししていましたから(大真面目な顔で告げるそれが本当か嘘かなど些末なことである。が、第二の嵐山隊として期待されて当イベントのメインを張っている隊が他にいなければ許されない暴挙ではあるだろう。頻繁に会う時間を作れない分、可能性のある時は兎角時間をこじ開けようとする。今日も二人の時間はあまり長くはとれないかもしれないが、だからこそ一分一秒を大事にしたがった。)……!(隠すように身体の後ろに回されてしまった手に、不思議そうな眼差しを見せるのも束の間。告げられた言葉に衝撃を受け微かに目を見開いた。彼女が自分のためにチョコを手作りしてくれたという事実。恥ずかしがる彼女がいじらしくて可愛いという事実。それらは実際、雷の落ちるような衝撃だったのだけれど――彼女に手を伸ばし掛けたとき、第三者の声が割り込んだ。烏丸の名を呼ぶ声に仕方なく浮かれた気分を引き締めて振り向けば、制服姿の女生徒が謝罪とともにチョコレートを差し出してきた。見覚えがあるな、と思う。アルバイト先のイタリアンレストランの常連客だ。然しながら、あえてそれを話題には乗せない。ちらりと横目で彼女の様子を伺ってアイコンタクトを済ませたなら、チョコレートを受け取った。)ありがとうございます。これからもボーダーの応援、よろしくお願いします。(つとめて事務的で、かつ丁寧な対応を心掛けて会釈をした。女子生徒は噛みしめるように「はい……!」と何度も頷き、失礼しますと頭を下げて引き返していく。さて、手元に残ったチョコレートをどうしようか。)ちょっと待っててください、置いてきます。(彼女に一度そう言い置くと、体育館の後ろに控えていた隊員に声を掛け、二つ三つの遣り取りを経てチョコレートを預けた。それはボーダーが預かった多数のチョコが入った箱の中に収まることだろう。たったそれだけの遣り取りで戻ってきたため、彼女を待たせたのはせいぜい2,3分といったところ。)仄火さん、場所を移しましょう。(開口一番そう切り出した。物陰とはいえここではいつボーダー隊員に声を掛けられるとも知れない。彼女からチョコレートを受け取る僅かな間だけでも、横槍の入らない状況が欲しかった。例えば体育館から少し離れたひと気のない廊下でも良いから。)
烏丸京介 2022/2/15 20:04 No.42
(盲目的な恋というのは、なんとも残酷だと眼前の光景に沁みる思いだ。彼による日頃から異性に情を寄せられることに慣れきっている応対というべきか、必要最低限の応対であるのに嬉しそうに駆けてゆくのと、手渡されたチョコレートが数あるひとつになってしまうのを見送って──あれが社交辞令に過ぎぬことを知れるのは、普段から他とは違う“彼女”として大切にされているからだと気がついた。ふたりで過ごせる時間を確保してくれるのも、恐らくは。それに応えるためにも、戻ってきた彼が場所を改めると言うのなら従うとしよう。じゃあこっち、と体育館を抜け出して案内する先、設備の整う校舎であるなら、人気のない廊下でも暖房が確保されており、寒い思いをしなくても済む。移動の最中も頑なに、手と持っているチョコレートは彼の目に触れないようにしながら。)ねえ、京介。さっきの子が渡してきたチョコの方が、ラッピングは綺麗だし、味も美味しいと思うわよ?(彼が数多の異性に好かれるなど、とっくに分かりきった話である。彼がどうこうできる問題でもないから、拗ねているわけではない。ただ、自分が万端と思って持ってきたものよりも、余程いいものに映ってしまったというだけだ。)玉狛支部の人たち宛てに、買ってきたチョコレートもあるの。こっちをバレンタインとして食べてくれる選択肢も今ならあるわ。(手提げた紙袋はもうひとつ。馴染みのブランドの、大人数の好みに対応できるチョコアソートも用意していた。この辺りなら邪魔は入らないと足を止めて、じっと見上げて仕切り直すとしよう。)……わたし、今まで誰かのためにお菓子なんて作ろうとも思ったことなかったのよ。だから……がんばったけど、あんまり自信がないわ。……それでも責任とって食べてくれる?(逃げ道も用意しつつ、その衝動に駆られた責任をなぜだか彼に転嫁しつつ──不安がってむずつく唇を、きつく噛んだ。)
調月仄火 2022/2/15 23:57 No.51
(案内を受けて移動する道すがら彼女の持つ物が気になって視線を向け窺い見ようともしただろう。頑なに阻まれてしまったため、しつこくならない程度で引いて、彼女が差し出してくれるまで待つことにしたけれど。)? 俺は仄火さんからのチョコが欲しいので。(家族が一番大事で、それ以外の人物はもちろん物にも執着することが殆どない性質をしている。何かが欲しいと思うより生活費を稼ぐ方が大事な家庭環境のためでもあるのだろうか。そんな男だから、綺麗なチョコが欲しいわけでも美味しいチョコが食べたいわけでもない。ただ好きな人からの想いの形が欲しいだけ。彼女が別のチョコを引き合いに出してくる意味は、まあ分からないではないが。用意されたもう一つのチョコレートについて聞けば、素直にお礼を言って頷く。)それはありがとうございます。みんな喜びます。(だがそれを自分用に受取ろうとは思わない。ひと気のない場所で足を止めると彼女の正面に立ち、彼女の赤い瞳を見下ろした。この角度からだと窓からの光を受ける睫毛がよく見える。)……俺のために、頑張ってくれたんですね。嬉しいです。(彼女の唇を親指で優しくなぞる。噛みしめられて傷がつきそうだったから、力を抜いてほしくて。)喜んで責任取りますよ。仄火さんの作ったチョコレートが欲しいんです。――それに、ほら。歯も丈夫なので。任せてください。
烏丸京介 2022/2/17 22:54 No.65
(年上であるから、ちょっぴり見栄を張っていることは否めない。お菓子が上手に作れない程度で見限られるような相手でないことは理解しているから、これはきっとただの意地。しかし予防線を拵えても気にせず求めてくれるから、抵抗力など残されよう筈もなく。うだうだ悩んでいるのが少しは馬鹿らしくなってくれたので、後ろ手に回していた紙袋は正面にいる彼に隠さないよう前でしっかりと持ち直して。)……あなたが喜んでくれるなら、いくらでも頑張れるんだってよくわかったわ。(慣れないことだとしても。怪我をしながらでも。ふっと穏やかに緩むはずだった口許は、やさしく触れられて望む通りの結果に加えて、頬を双眸の色に負けじと染め上げる。「きょうすけ、……」と力なく名を呼んだのは、気恥ずかしいから咎めるつもりだったのだけど、どう聞こえたかは定かではない。さておき、そっとチョコレートを差し出そう。)一番大きいのは玉狛支部の人たちに。青いリボンはあなたの下のきょうだいたちに。赤いリボンがあなた宛てよ。(収められている箱はみっつ。前者ふたつは既製品のチョコアソート。後者は黒い箱に赤いリボンが、すこし不恰好な蝶を形作っている。中身は後輩に助言を貰いながら四苦八苦したガトーショコラ。ねこの形に切り抜いた型紙を使って粉糖をまぶしたから、一見黒猫が佇んでいるようにも見える様だ。)歯?あっ、歯ね……最初にチョコを冷やして固めただけのものを練習で作ったら、びっくりするぐらい硬かったのよ。これはたぶん大丈夫……だと思うわ。恥ずかしい!忘れてって言ったのに……!(歯の強度については照れ笑いを隠せない。あのLINEはまだ手作りチョコレートの練習の序盤だったことの種明かしをしつつ、「京介の歯が欠けたらそれこそわたしが責任を取るからね」と冗談を添えつつ。)
調月仄火 2022/2/19 23:43 No.78
仄火さんが俺のために何かしてくれるならいくらでも喜びますよ。……できれば次は無傷でお願いします。(彼女が自分のためにしてくれることは、嘘偽りなく掛け値なくなんでも嬉しい。傷の一つや二つを大袈裟に騒ぎ立てる性分でもない。けれど、彼女の痛みを思って少しも胸が痛まないような薄情な恋人ではないのである。怪我をしない程度に上達してくれたら嬉しいところではあるけれど、過分なものを求めることは今後もないだろう。手渡せるだけの分を渡してくれるだけで無限に力が湧いてくる。それが恋だと知ったから。)……。(弱弱しい彼女の声が甘い響きで耳朶をくすぐる。唇をなぞっていた指先を彼女の細い顎にかけ、傷の無い艶やかな彼女の唇に、角度をつけて自分のそれを重ねた。衝動よりも頭で考えたことに従って行動することの多い男だが、それに関しては100%衝動に従った結果だったと言えよう。目蓋を閉じてその柔らかさを味わい、学校の廊下というのに許可も取らずにキスをした謝罪は額の触れるような至近距離から。「すみません。“キスして”って聞こえたもんで。」口振りとうらはらの悪びれない態度は怒られても仕方がない。けれどもそれ以上の狼藉を働く気は無いから、渋々立ち話に相応しい距離を取った。紙袋を受け取り、貰ったチョコレートを確認する。大きさとリボンの色を確認して頷いた。手ずから結ばれたのだろう少し曲がったリボンまで愛しくて、胸の内が満ち足りていくのを感じる。)大事にいただきます。(例年、貰ったチョコレートはその大半が弟妹行きになっていた。彼女がそれを知る由もなく、きっと烏丸が家族を大事にしていることを知っていて用意してくれたのだと思うから。その心遣いと、彼女からのチョコを気兼ねなく独り占めにできることが嬉しかった。)俺はそれも食べたいくらいですけど……。……本当に頑張ってくれたんですね。(歯の心配をするLINEを飛ばすくらいだった出来栄えからどれほど進化を遂げたのかは落ち着いたところでゆっくり確かめさせていただくとして。彼女の冗談には「歯が欠けても好きでいてくださいね……」などと哀愁背負った素振りで冗談を返すだろう。)
烏丸京介 2022/2/21 08:16 No.87
ふふっ、尽くし甲斐のあるひとね。悪戯でも仕掛けちゃおうかしら。……努力はするけど、約束はできないわよ。好きな人の為には頑張りたいものでしょ。(ちょっとしたお茶目でも彼は喜んでくれるのかが気になって、くすぐったそうに笑っては首を傾ぐ。手先の痛みなど、チョコレートに寄せて彼に伝えたい想いに比べれば瑣末なものだ。心配させ過ぎるのは本意ではないけれど、彼の為にできることが増えるのなら嬉しいから、確約は出来なくて。これもまたひたむきな真心ということで許されたいけれど。そんな相手の指先ひとつでたやすく心拍数が上がり、余裕が崩されてしまう自覚はある。あっと思った時には優しく重なっていて、思考が置き去りにされていた。)……っ……!!!〜〜〜ッッ……ちょ、ちょっと……。随分と都合のいい耳ねえ!?(わなわな震えて慌てふためく様は、先よりも更に赤く熟れた林檎にも見えるほど。抗議の声色ではあったが、しかしそんなつもりじゃなかったと言いはしない。「不意打ちはやめてよ……」とかぼそく咎めるのは、当然恋人との口づけを厭う筈はないので、愛おしさを伝う行為として自分も大切にしたかったというだけのこと。年上の余裕など、あったものではない。)うん、どういたしまして。感想も聞かせてね。……。ね〜え、物好き過ぎるわよ!こんなに大事にされてたら、離れがたくなっちゃうわ。(同じくらい彼のことを大切にしたいからこそ、心を彼の家族にも傾ける訳だけれど、真っ直ぐな想いがどうしたって面映くて、束の間の時間でしかないことを忘れてしまいそうだ。一歩だけ彼に近づき、そっと手を伸ばして、繋ぎたがる。)当たり前でしょっ。……欠けた歯ごと愛してるに決まってるじゃない?……なーんて。……ふふ。だいすきよ、京介。(冗談には冗談で返そうとしたけれど、想定外に心のうちが一緒に溢れてしまったみたい。はにかみながら改めて告げるのは、日に日に落ち着くどころか深まってゆく彼への情だった。)……そろそろ戻る?人気隊員をいつまでも独り占めなんて怒られちゃうわ。今日は時間作ってくれてありがとう。(本来ならば一人に捧げられるべき時間ではないから、自ら促して体育館へ送り出そう。渡したガトーショコラは砂糖を少し入れすぎて甘すぎるくらいかもしれないけれど、あなたを思う心を表していると思ってくれたらいい。)
調月仄火〆 2022/2/22 22:56 No.97
悪戯ですか。 お好きなだけどうぞ。(彼女の言葉を繰り返して考えるように僅か沈黙した。いったいどんな悪戯を仕掛けてくるのか正直に言って興味があり、結局は殆ど即答の間合いで頷く。彼女が烏丸を本当の本気で困らせるような悪戯をしないと承知しているから、考えても断る理由は見つからなかった。彼女が怪我をしないよう努力してくれるのはいい。だからといって怪我をしても良いと頷くことはできないけれど、いじらしい思いはまるごと受け止めたい。今度は数秒のはっきりとした沈黙を経た後、「……上達に期待してます」と頷いた。――彼女とキスをした直後に表情を確かめたくなってしまうのは悪癖じみているかもしれないけれど、いつでも彼女は可愛らしい表情を見せてくれる。赤い頬が愛おしくて仕方ない。)「もう1回して」って言いました?(都合の良い耳だから咎める声をそんなふうに聞いて、けれど、今はそれを冗談にしなければならない時であるのが惜しかった。)はい、もちろん。……そうですか?好きな人が自分のために作ってくれたものならなんでも欲しくなるのが男心だと思いますけど。……、離れられたら困るので、嬉しいです。(彼女の方から伸ばされた手を迎えるようにして手を繋ぐ。彼女の嫋やかな指先はこれまでの人生に馴染みの無かった感触をしていて、自分とは生きてきた世界が違うのだと感じる。だからこそこの手を離さずに済むように最大限の努力を今後も続けていく心算だ。)……俺も。あなたが好きです、仄火さん。(手放しで伝えらえる愛情が心をくすぐって、自然と口元にかすかな笑みが浮かんでいた。握った手にぎゅっと軽く力を込め、いよいよ離れがたい心情だったけれど。)そろそろ戻らないと……(そう切り出したのが彼女と同時で、ふと眦が緩んだ。想定より長居してしまったが、実りある時間を過ごせて後悔はない。)俺の方こそありがとうございます。……近いうちにちゃんと時間を作ります。今度はゆっくりデートしましょう。(僅かな暇を縫ってでも彼女に会いたかったのは事実とはいえ、会えば余計に想いが募るということを思い知らされてしまった。文句ひとつ言わない彼女のためにも、予定をこじ開けてみせよう。アルバイト先のイタリアンに誘うばかりではなく、まる一日。貰った分の愛情を3倍返しできるように。)
烏丸京介〆 2022/2/25 22:11 No.120
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